『かなりの力作です』
タロット関連の資料としては、かなりの力作です。
実際、例に引かれている書物や資料の数は相当数に上るし、写真図版も貴重なものが多い。
そして何より、著者の第三者に徹した冷静な視点が良い。
この手の本では、つい自分の思い入れや思い込みをくだくだと書き綴る著者が多いものだが、伊泉氏は一言二言の感想は述べても、決して根拠の無い不確かな思い込みを書きなぐる様な真似はしない。この辺りが、この本の資料性をより高めている。
図像学的な考察にはもう一歩突っ込んで欲しかった気もするが、歴史的な考察は十分に深い。
決して安くは無い価格だが、タロットファンならば持っておきたい一冊。
ただし。所々「えっ?」と思うような間違いもある。例えば60ページ、ロバート・ウォン制作のユンギアン・タロットを2001年に作られたとしている。どこをどう間違ってそんなことになってしまったのか? R.ウォンのユンギアン・タロットは1988年の制作である。
せっかく資料性の高い本なのだから、その辺りのチェックは抜かり無くやって欲しかった。
ま、その辺の間違いを探すのも、マニアとしては楽しいですが……。www